【一部公開】この夏に読んだ小説🍉おすすめの作品を紹介|朝葵の本祭り

集英社の「ナツイチ」や、金曜ロードショーの夏のジブリ祭りのような、季節に合わせた特集っていいなと思います。その時期だけの特別なわくわく感があって、なかでも夏のノスタルジックさにはいつも心をつかまれます。

そんな気分に背中を押されて、自分だけの「本祭り」を開くことにしました。いつもは読みたいものを気ままに選んでいますが、今回はテーマを決めて、それに沿った小説だけを集めてみることに。

テーマはもちろん“夏”。物語の舞台が夏だったり、夏の空気が感じられる描写があったり。そんな作品を中心に、初めて読む本から過去に読んだ本まで5〜6冊選びました。今回は、その中でもとくにおすすめの3冊を紹介しようと思います🌷

『夏至祭』長野まゆみ

祖父の持ち物だった、”夏になると針が止まる時計”が、今年も止まった。初夏の夜、主人公・月彦は以前から気になっていた空家に灯りがともっていることに気づき、そこで2人の少年・黒蜜糖と銀色と出会う。彼らが半夏生に開かれる秘密の集会に参加することを知った月彦は興味を抱くが、黒蜜糖は集会に参加するために必要な、ある物を失くしてしまっていた。

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この夏、最も「出会えてよかった~!」と思った作品が、長野まゆみ著『夏至祭』。半夏生に行われる集会に参加するためにやってきた、どこか神秘的な少年たちとの交流が、幻想的で耽美的な世界観の中に描かれています。

豆洋燈、蜂蜜と果実酒、洋盃、白雪の芍薬、レモネエド……こんなノスタルジックな響きに惹かれる方にきっと刺さるはず。宝石やアンティーク小物が入った箱を開けて覗き込むような、わくわくする読書体験でした。

黒蜜糖たちが使う生活道具やテーブルに並ぶ食べ物など、小道具のひとつひとつが魅力的で、読んでいてとっても楽しい。情景描写も美しく、ここではあえて詳しく触れませんが、読んでいて目の前にその光景が広がるような感覚です。短めの作品ながら、サクサク読み進めるのが惜しくなる一冊。

また、天真爛漫でおっとりしてるけど芯の強い黒蜜糖と、冷淡な感じに見えるけど何だかんだいい奴な銀色のキャラクターもおもしろく、何より名前が主人公を含めて特徴的。主人公のおばあちゃんも何だか素敵な方で、個人的にはおばあちゃんの話をスピンオフで読んでみたいと思いました。

また、作者の「あとがき」もよかったです。小さい頃の縁日で手に入れたものや、それにまつわる思い出、そして最後には文章を書くうえで「しないように心していること」についても綴られています。

これから毎年、夏至~半夏生の時期になったらこの本を読みたい。長野まゆみさんの作品はこれが初めてだったので、次は泉鏡花文学賞を受賞された『冥途あり』を読もうかなと思います🌻

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